メキシコ出身のアーティスト、Héctor Falcón氏が自身初のNFTプロジェクト「The Whole Picture」をStrataと共同制作

Strata Gallery
May 23, 2021

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Constructive Modular Extraction

「The Whole Picture」と名付けられた本プロジェクトは、アーティストとNFTの購入者たちが、ブロックチェーン技術の上に共同で芸術作品を作り上げる試みです。唯一無二の何層にも重なった1200枚の絵画が織りなすインタラクティブなアート作品であり、デジタル世界とアナログの世界をつないぐ新しいアートのあり方を提示します。

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発表日:2021年6月

力強い表現力と色使いで人々を魅了するアーティスト。その枠を今まさに超えてゆく存在、それがHéctor Falcón氏です。彼には、ニューヨークのグッゲンハイム美術館、パリのパレ・ド・トーキョーなどでの展示経験、また数々の受賞歴があります。これまでに個展で35回、集合企画展で140回の展示を行い、Frieze、The Armory Show、Art Basel、Voltaを始め、世界に名高い展覧会でもその作品が公開されてきました。

芸術活動を始めて20年が経った現在、その目ざましい成功の足跡は、まだまだ一部のアート関心層にのみ知られる存在ですが、現在48歳のHéctor氏には、幅広い年代の熱狂的なサポーターがついており、自身がアートを学び、日々を過ごした日本とメキシコに特にそのようなファンが多く存在しています。彼は、アートの歴史に1ページを刻むことになるであろう本プロジェクトを、このたび日本のみなさまにも公開できることに大きな期待を寄せており、目下制作が進行中です。

本プロジェクトの目玉となる作品は、「層【レイヤー】をかさねる視点」にコンセプトが置かれています。皮膚も、見方を変えればレイヤーです。自身の皮膚に入れ墨を施し、骨にも金属を入れるなど、さまざまなものをキャンバスに見立て、アートに変えていくHéctor氏のスタイル。その代表作である「Constructive Modular Extraction」は、自分で描いた絵画をカッターで断ち切り、そのキャンバスの奥深くにある隠れた絵を露わにするものでした。

「重なっている絵画に穴をあけていくことで、その穴を通して、それまで目に映らなかった裏の絵画が見える。覗き穴から何かを見るという行為は、同時に“誰かに見られる”ことでもある。」 Héctor氏が影響を受けた日本美術、とりわけ浮世絵に学んだ、「作り手と観る側のインタラクティブなやりとり」の本質をここに見ることができます。どうすれば、私たちの中にある「美しさとはこうあるべきだ」という先入観を取り払うことはできるか? そんな問いに、Héctor氏は遊びを交えながら応えていきます。

彼の試みと呼応するかのように、「既成概念をくつがえす新しいアートのあり方」を生み出すことを目指して、Strata(ストラータ)は、The Whole Pictureプロジェクトをスタートしました。Héctor氏が、アナログの世界で模索し作り上げた、名声とアート、そして創造性を、デジタルとNFTの世界で表現し共有します。また、1200名の参加者は、自分だけのHéctor Falcónのアートを彼のクリエイティビティとインタラクティブに関わりながら作りあげることができます。

オーナーになるには、4枚のデジタルキャンバスを1セットとしたアートを購入します。各キャンパスはそれぞれ流通量に限りがあり、同じ絵画がこの世に何枚も存在することもあれば、この世に数枚しかないという希少性をもったキャンバスも存在します。完成段階では、参加者は、各キャンバスを移動したり、向きを変えたり、自動的に視点が切り替わるようなアートに変える等のコ・クリエーションが可能です。

ストラータとは?

ストラータは、東京とニューヨークを拠点に活動する小さな美術ギャラリーです。私たちは、NFTが世の中に知られるにつれて、それがアートの世界を根本的に変える脅威として、あるいは芸術に民主主義のルールを押し付ける悪しきものとして誤解され、投機目的の戯言だとすら誤認される状況を目の当たりにしてきました。事実、アートを鑑賞する人びとと芸術家の間を商業的な意味合いでのみ仲介してきたギャラリーや画商は、NFTの勢いにその足元を脅かされていることでしょう。しかしNFTの本当の意味は、お金と専門知識を持つ一部の人にしかひらかれてこなかった閉鎖感あふれるエリート主義と過度な「限定感」にもとづく商業主義といった“アートをとりまく古い概念”をひっくり返す可能性にこそ、あります。

新しいことに誰もが挑戦できる無法地帯のような場所であるほど、私たちはあらゆる可能性に期待し、心を躍らせます。今までの「アート」がそうであったように、デジタル上のアートも、人びとに新しい時代の幕開けを予感させ、その五感を研ぎ澄ます喜びをもたらすことでしょうう。そこには美の概念とその根本にある人間らしさそのものが表現されていきます。(壮大なる進化のの傍らには、昔のゴールドラッシュのように暗号資産に思いをはせ、群がる人々を冷たい目で見るアートも登場しています。)

ここに、ストラータが探求する「2つの問い」があります。一つ目は、手で触れられるアナログなアートと、触ることのできないデジタルなアート。それらの一方がもう一方をお互いに高めあうしくみを、どうすれば構築できるか?二つ目は、ブロックチェーンの技術で可能となる「データの一意性」の上に、アートの作り手と、鑑賞する側の人びとを繋げ、インタラクティブなコミュニケーションをどのように生むことができるか?です。

「 NFTアートワークは、購入すればそれで終わりというものではなく、常に形を変え、長期的な価値を、その作り手と、持ち主、そしてコミュニティーメンバーに与えるものであると信じている」それが、ストラータの考えです。

NFTというメディアは、新しい「ものの見方」、新しい形でのアートの創造と体験、そして所有の方法を生み出していきます。そこには、アナログなアートと競合することなく美術的表現をアップデートする道が生まれていくことでしょう。美術評論家のシュタインバーグ氏は、「オリジナルなアートというのは、それ自体の限界突破を求めるものだ(All original art seeks its limits)」と説いています。ブロックチェーンの技術が、アートとそこにある思想を人々によりパワフルに伝道することを可能にし、我々が生命の息吹を得る革新的で新しい一歩になることを信じています。

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Written by Strata Gallery

Art gallery & creative technology studio at the intersection of digital and physical art.

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